リッチブラックとは何か

はじめに

皆さんは、リッチブラックをご存じでしょうか。リッチブラックとは、黒(K)に対してCMYのインキを加えたものです。

KはキープレートのKを表します。キープレートとは、印刷物の輪郭や細部を表現するために使われていた版で、黒色を版に使用していたことから現在のCMYKのKの呼称となっています。
CMYは、シアン、マゼンタ、イエローを示したものです。この4色をプロセスカラーといいます。
多色製版の印刷では、この4色の色を網点で表現しています。網点は大変細かく。直径約0.03mmから100%ベタの状態まで再現できます。違う色の網点同士の重なり合いや密度の違いによって、細かい色の差異を表現しています。プロセスカラーのインキ量を設定することで網点の比率を調整しています。インキ量の%が高いほど網点の密度は上がり、低いと密度は下がります。
CMYKについてさらに詳しく知りたい方はリンク先 「CMYK」にまつわる豆知識をご参照ください。

また、印刷の工程について詳しく知りたい方は「知っていると便利な印刷基礎知識編~印刷方式比較編~」
「知っていると便利な印刷基礎知識編~RIP編~」もご参照ください。

リッチブラックとは

リッチブラックとは、黒(K)に対してCMYのインキを加えたものです。
シアンの値を増やすと青みがかった黒。マゼンタの値を増やすと赤みがかった黒になります。下の図は左からK:100%、K:100%に対してC:100%を加えた色、M:100%を加えた色、Y:100%を加えた色のイメージになります。並べてみると、それぞれの色に差が出て見えることが分かります。このようにCMYを加える割合により、黒色でもさまざまな表情になることがリッチブラックの大きな特徴です。

リッチブラックは主に、
・商品広告
・宣材写真
などで使われます。
中でも、黒色の商品や頭髪の色など、より濃い黒を表現したい場面で使われています。文字単体よりも商品の写真やビジュアルなどの細かい陰影を表現する際に使われることが多いです。

注意点を理解して活用しましょう

リッチブラックには、注意すべき点があります。
それは、プロセスカラー(CMYK)の値の合計値です。前項でリッチブラックとは、インキの黒(K)に対してCMYを加えたものだと説明しました。このインキは指定された値に合わせて重ねられます。
値に合わせて、網点の密度が変化します。色が濃ければ網点の密度は上がり、薄ければ密度は下がります。下記の図は、左からK:20%、K:40%、K:60%、K:80%、K:100%のインキの値の網点を拡大したイメージになります。

この網点同士の重なりによって、色は表現されます。値の高いインキは網点の密度も高いため低い値に比べて乾くのにも時間がかかります。値の合計値が高いとインキの使用量(総インキ量)が多くなってしまい、乾くのに時間がかかることで以下の問題が起こる可能性があります。

1点目は裏移り(うらうつり)です。裏移りとは、印刷物を重ねたときに、用紙の表面または裏面のインキが重ねられた別の紙の反対面に、移ってしまう現象です。

2点目は裏抜け(うらぬけ)です。裏抜けとは、表に印刷したインキの成分の一種が紙の裏にしみ通ることです。しみ通しとも呼ばれることがあります。
裏抜けはインキの使用量が多い場合以外にも起きる可能性があります。例えば、紙に対してよく浸透するインキを使用する場合や、薄い紙を使用する場合にも裏抜けが起きることがあります。

裏移りや裏抜けを防ぐためにも、リッチブラックを使用する際は、プロセスカラーの合計値、つまりはインキの使用量をご確認ください。使用量(総インキ量とも呼びます)の限界値は印刷会社によって違います。ご心配、不安に感じる点がある場合は、ぜひご相談ください。

最後に

いかがでしたでしょうか。効果的に色を使用することで表現の幅は広がります。注意すべき点はありますが、ぜひ、ここぞというワンポイントや特別な演出にリッチブラックを使用してみてください。 また、印刷データで分からないことやさらに詳しい話をお聞きになりたい場合はぜひ当社営業までお気軽にお問い合わせください。

参考リンク・書籍

(web)一般社団法人 日本印刷産業連合会|印刷用語集|裏移り(閲覧日:2022年2月22日現在)
(web)一般社団法人 日本印刷産業連合会|印刷用語集|裏抜け(閲覧日:2022年2月22日現在)
(書 籍)カラー図解 DTP&印刷スーパーしくみ事典2015 発行・発売:株式会社ボーンデジタル

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